2024年度
長野青年会議所
2024年度理事長所信
「不易流行」
~ 誰かの為に、新たな一歩を共に歩もう ~
私達にとっての「不易」とはなにか。
変えてはいけないものと、変えなくてはいけないもの。
青年の発想はもっと大胆であり、革新的で良いはずだ。
脈々と受け継がれる伝統を守り、覚悟をもって変えていく。
みんなが目には見えない“誰かの為に”活動しているんだ。
さあ71年目の新しい一歩を共に歩もう。
はじめに
「実力の差は努力の差、実績の差は責任感の差、人格の差は苦労の差、判断力の差は覚悟の差、真剣だと知恵が出る、中途半端だと愚痴が出る、いい加減だと言い訳ばかり、本気でするから大抵のことは出来る、本気でするから何でも面白い、本気でしているから誰かが助けてくれる」これは甲斐の将軍武田信玄公の言葉である。まさに青年会議所活動を行う上での心の源流を紐解いた言葉に思える。長野青年会議所は1953年に戦後復興の最中、青年会議所の理念である「明るい豊かな社会の実現」を目指して、愛する長野の為に立ち上がった25名の同志によって創立されて以来70年にも亘り、先輩諸氏の幾多の努力によって、市民の皆様や地域に必要とされ、長野市に深い根を張りながら存続してきました。時代が令和に移り変わり、想像も出来なかった様々な事象によって閉塞感が世界中を覆っている昨今においても、このまちは、歩みを止めることなく明るい豊かな社会の実現に向かって、今も着実に歩みを進めています。71年目の新たな一歩を歩みだそうとしている今、地域の将来像を明確に描く私達だからこそ、薄れかけている長野青年会議所に受け継がれてきた機微を今一度理解し、長野青年会議所の同志達の想いを結集し、地域にインパクトを与えるより具体的な方法を考え、実行に移すことが今最も必要なことだと私は考えます。
皆、限られた時間だからこそ、己以外の誰かの為にどこまでも情熱を燃やし、英知を纏うJAYCEEであり、「ナガノ」を愛する地域人でありたいと願っています。
何を守り、誰に伝える
長野青年会議所は地域に必要とされる存在で居続けなくてはなりません。そして我々はもっと目立たなければいけないと思うのです。その一方で近年は、組織としてのガバナンスと品格が重要視されるなか、組織全体としては勿論のこと、所属するメンバー全員が長野青年会議所の看板を背負っていることを意識した自覚と行動が求められており、我々は今一度兜の緒を締めなおさなくてはならないと強く感じます。その為にも組織を根幹から見つめ直すことはより重要であると同時に、メンバーの誰もがより良い長野の実現を目指して会費を支払い、対外の方では理解出来ないほどの時間と労力をこの組織につぎ込んでいる以上、最も効果的で最も効率よく、運動の成果を最大限に上げられる為の仕組みと、様々な支援を行うことの枠組みを構築する責務が我々にはあります。そして、規則に基づいた組織運営を行っていくには、誰が見ても適正な資金の使い方、明確な規範に基づいた厳正な組織運営を継続していくことが必要です。長野青年会議所が設立から71年に亘り、どのような困難なときも歩みを止めることなく運動を展開してきた背景には、先輩諸氏が築かれてきた伝統への尊重と規律の遵守があることを忘れてはいけません。そして、その積み重ねが、まちと組織をより良く変えんとする長野青年会議所のブランドをさらに磨き上げ、より信頼される組織に成り得るのです。
また、私達は連綿と受け継がれてきた伝統や機微を、青年経済人としての英知を振り絞り、継承すべきものと時宜に応じて改めるべきものに区分し、現状に見合った最も適切な形に進化させていく必要があります。そしてそれを担保するものは、会員同士の話し合いを通じた合意の形成に他なりません。会議を通じて意思決定を行い、社会を変えるべき事業を生み出している私達だからこそ、大いに議論を行い、私達の目指す運動への信頼を獲得することで、強固な組織基盤を構築していきましょう。
青年会議所という共通理念を持つ組織は全国各地に存在します。また、世界を見ても多くの国と地域で国際青年会議所の活動がなされています。青年会議所がもつ幅広いネットワークから得る知識と経験のみならず、人と人とが関わりあうことで感じる新たな視点を学び得る必要があるのです。その貴重な機会を得ることが出来るのが出向へのチャレンジだということを私は身をもって感じました。出向や渉外活動によって得られるものは個人の成長だけでなく、その成長は組織としての成長の一助となり、組織の魅力が増大し、より多くの仲間を集めることになり、やがて大きな力となります。そして、世界へ広がる幅広いネットワークを通じて、長野青年会議所の価値は一層高まることでしょう。出向や渉外活動によって広がる可能性を探求し、そこで学び得たことや、様々な想いを応援する側も含めて認知していくことが不可欠であり、出向先で新たに出会った仲間とのつながりや、LOMの枠組みを超えたことで得られる経験や知識を他のメンバーにも魅力的に感じられる場をつくり、出向者をLOM一丸となって支えると共に敬意を示してまいります。また、日本青年会議所とJCIが主催する各種大会へ積極的に参加を呼びかけ、同じ志をもつメンバーと相互理解を育む機会をサポートすることも重要であり、各種大会の意義・目的を理解してもらう為に、魅力ある情報発信により参加意欲の向上を図ることが今後も必要不可欠です。敬愛する仲間達と共に総会をはじめとする対内の各種会議や事業、対外事業だからこそ得られる貴重な経験と色褪せることのない青瞬を刻む為に能動的に参画し、目の前の機会を一つ一つ大切に捉えよう。
何の為に、誰の為に
例会は長野青年会議所の資産であります。そしてその資産はLOMに蓄積されると共に、発信者側にも受け手側にも心の片隅に永遠に残っているでしょう。メンバーは例会によって磨かれている。私は毎月の例会に出席するたびにそう感じています。例会には新鮮な学びが全メンバーにとって必要です。作り手として参画している際の想いを常に持ち、聞き手にまわった時も楽しむ心を忘れずに、思いやりの心と学びの姿勢をもって例会に臨んでいただきたいと私は強く願います。全国を見渡しても例会会場選定からプログラム、参加推進から目的の検証まで、これほど細部にわたって拘っている青年会議所は少ないのではないでしょうか。それを実現できているのは、伝統ある例会委員会という影の存在の、きめ細やかな支援があることをメンバー全員が決して忘れてはいけません。例会こそ、長野青年会議所のフィロソフィーであり、メンバーの成長と学びの機会であり続けなければいけません。例会に挑戦するメンバーはこの機会を最大限に活かしましょう。そして参加者が楽しく、新たな学びを得ることが出来ると思える例会づくりに真剣に取り組むことで、何の為の例会か、誰の為の例会であるかを見つめ直す機会となるはずです。例会を通じ、志高き多くの同志が集い、感じ、学び、新たな人脈と知見を得ること、そして発展と成長の機会を獲得し、自身により良い変化をもたらす力を体得することは、「明るい豊かな長野づくり」の実現に繋がると確信いたします。毎月一回、メンバーの周波数を合わせ、共感の輪をつくることのできるこの唯一無二の機会を全員で楽しみましょう。
魅力拡大
青年会議所の魅力とは何だろうか。私は青年会議所の最大の魅力は、「つながり」と「機会の提供」だと考えています。それは個人、組織、地域がもつ可能性を引き出す機会を常に与え続けてくれるからです。その機会を掴むかは、すべて自分次第であることが、裏を返せばこの青年会議所の魅力であり、そのことがまだ見ぬ入会対象者、そして入会間もない会員に理解されづらいことが、魅力拡大の障壁になっているのかもしれません。日々の活動、運動を通じて提供される機会、出向先での様々な機会。私達は青年会議所に所属していることで常に多種多様な機会を与えてもらっているのです。私達の身の回りに起こる全ての事象が機会であり、その機会を通じてより良き変化を能動的に創出していく運動体こそが我々であることを理解した上で、この組織がもつ機会を十分に活かし、その魅力と可能性を周囲に自らの言葉として伝えることがより強く大きな運動を推進する為に必要であります。青年会議所活動での財産となる、人と人とのつながりという一番大切にしなくてはならない
要素も機会を活かさなくては生まれるものではありません。青年会議所はよく「学び舎」として例えられ、「多様な機会を通じて自らの学びとするところである」と、青年会議所について人に説明をする際の表現としても多く使われています。それだけ学べることは多種多様にあり、この組織がもつ機会を40歳までという限られた時間で最大限に活用し、自分の一生を変える青年会議所運動という原体験を通じ、自らを、地域や国を、より良く導く人財へと高め、その光をもって輝かせるJAYCEEとなっていただきたいものです。長野青年会議所は毎年多くの新入会員に入会していただいており、様々な事情や環境をもつメンバーが何らかのきっかけで、この組織の門を叩いてきます。新しく同志となるメンバーに対し、真剣に心を寄せて迎え入れ、正しく導くことは、僅かばかりでも先に入会している者としての務めであります。魅力溢れるメンバーが一生に一度の機会の意味を情熱もって拡大活動をすることで、その情熱は間違いなく対象者の心に灯をともすと信じています。
拡大活動や、我々のブランド力を高めていく上で最も必要なことは広報であります。私達の運動や事業の成果は、発信方法が多様化し、ホームページやSNS等のあらゆる媒体で市民の皆様やメンバーに届けることができるようになりました。他方で、現代は情報過多社会であり、情報の受け手側が自分にとって価値ある情報を見極め、選択できる時代でもあります。運動の発信先を特定のターゲットに絞り、そのターゲットに向けて、最適な方法で発信する戦略的な広報活動が今最も求められています。企業や団体における広報の手法も劇的な変化を遂げています。メンバーが自社の広報戦略に活用できるような、時勢にあわせた最適な広報手法を活用し、効果的な内外への広報を展開していく必要があります。さらに、発信した情報が選ばれるものであり続ける為には、その情報を発信する主体である長野青年会議所そのものの認知度を向上させ、情報の価値を高めていかなければなりません。長野青年会議所が何をやっている団体かそもそも分からない状態ではだめなのであり、ブランディングの意味が問われています。長野青年会議所の価値向上に繋がる最も効果的な方法は、地域に「インパクト」を与える事業を長野青年会議所の冠で実施することです。地域のニーズを的確に分析し、長野青年会議所だからこそやらなくてはならない事業を実施することで、地域により良い変化をもたらすことができます。記録ではなく記憶に残る事業を構築し、長野青年会議所の存在そのものをブランディングするそんな転換期にしていかなくてはなりません。そしてそんな事業がまだ見ぬ仲間と我々を結びつける架け橋になると私は信じます。長野青年会議所の魅力を拡大し、的確な情報発信をすることで、長野青年会議所のファンを増やそう。
希望の轍
長野市は、四季折々の美しい自然を感じることができ、戸隠連峰、飯綱高原といった山々、一級河川である犀川や千曲川などの風光明媚な名勝、善光寺をはじめとする歴史ある神社仏閣を代表とし、東山魁夷や県立美術館、まちかどモニュメントをはじめとする文化芸術分野はアート大国長野と言われる一翼を担い、松代や川中島古戦場などの歴史的資産に加え
オリンピックレガシーの残るスポーツ施設、複数の短大、大学に加え良好な住環境、整備された公園、利便性の高い交通網など、まさしく幸せ実感都市ながのに相応しい、住みやすいまちです。しかしその反面、2000年をピークに長野市の人口は減少に転じており、さらに加速度的に高齢化しています。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると2060年には、総人口が27万人を割り込むことが予想されており、全国的な人口減少・高齢化の流れに飲み込まれることが想定され、まちの活力を維持・向上させる為には何らかの対策が必要です。確かに、長野市は住みやすいまちです。しかし、将来を見据えたとき、今の住みやすいまちの状況に慢心すべきではなく、長野というまちが、定住、交流の両面からより多くの人達から選ばれるように、活力あるまちであり続ける必要があります。
活力あるまちづくりを目指す上で青少年は地域の源泉として未来のまちを創る存在であり、青少年の育成は、まちの未来を創ることと言っても過言ではありません。青少年育成においては、子ども達が置かれた現状を踏まえながら、私達が目指す社会の本質を見極め、それらをつないでいくことが必要です。しかし、青少年の置かれる現状は社会情勢や家庭環境の複雑化も相まって厳しさを増しています。自らの選択で自分のやりたいことを見つけることはまだしも、見つける機会を充分に得られていない子ども達が沢山います。その結果、自分はどうありたいのか、何を成し遂げたいのかという夢を持ちづらくなっている状況にあると言えます。一方、長野青年会議所が目指す社会の理想は、まちに住む全ての人々が笑顔で生きがいを持ち、自らの夢や目標に挑戦しづけることができる地域社会であり、長野市による教育大綱によれば、長野市を築く担い手としての青少年が、敬愛の心を基底に実践力を備え、責任感の強い心身共にたくましく、創造力豊かで、国際性に富んだ広い視野と深い洞察力を持った人間に成長することを目指しています。本年は70周年未来ビジョンに掲げるJCI NAGANO PLAN80〜Dream of Youthプロジェクト~の元年に当たり、子ども達の明るい未来を創造していく先駆けとなる年です。まずは、家庭や学校、各機関とも連携しながら、子ども達が夢を創造する為の一助となるような機会を創ると共に、原体験の機会を大切にし、自ら考えて判断し行動する自律力、多様性を尊重したコミュニケーション能力、そして問題を解決し新たな価値を生み出す創造力を養い、これらの能力を育むことで、自らの可能性に気づき、ありたい自分や成し遂げた自分の実現に繋げられる契機とし、どんな逆境にも左右されない志高い信州人を育む土壌を築かなくてはなりません。また、長野地域は日本有数のプロスポーツチームが存在しており、さらには多くの若者や社会人が世界に羽ばたくほどの実績を残しているスポーツ推進都市です。そして今、WBCやバスケットワールドカップなど、全国でスポーツに対する熱が一層沸き上がっています。このスポーツに恵まれた土壌を活かし次世代を担う若者と共にスポーツ推進都市として、さらなる一歩を踏み出すことができれば長野の魅力の創造のひとつのきっかけになります。スポーツは、あらゆる人を繋ぐ普遍のツールです。さらに、コンピューターゲーム等をスポーツとして捉えるeスポーツが世界を沸かせています。身体能力に関係なく、多くの人が取り組めるこの新しい形のスポーツは、まちの魅力を創造する大きな起爆剤となる可能性を秘めています。長野で馴染みの深いスポーツだけに囚われるのではなく、門戸を広げ、性別、年齢関係なく多くの人を巻き込める、そんな魅力的なまちをスポーツという機会を通じて創造しましょう。
一方で高校生、大学生へと目を向けると進路として首都圏を選び、そのまま首都圏へと就職する傾向が引き続き高くなっています。最新の長野市民アンケートの高校生意識調査によると、市外への進学希望が6割を超え、将来の就職場所についても6割が市外を高校生の段階から希望している傾向が伺えます。このアンケートからは長野市への愛着度でみると、愛着度が高いほど市内への進学就職の割合が高い結果が明確に出ております。逆に近年は、大学や短大の創立が相次ぎ県外の学生が希望して長野市の大学に学びに訪れるケースも増えてきました。若者が学生の段階で地域社会の魅力に触れることは非常に重要であり、長野市にとっては自然環境や歴史、市内企業、地場産品等の魅力ある資源が違った視点から発掘されて、活かされることが望ましく、現状に甘んじるのではなく、未来を担う若者の視点を取り入れ、長野の魅力を生み出し続けることにより、学生だけでなく人々に選ばれるまちとして、持続可能な発展へと繋がる可能性があるのです。長野のまちの魅力を誰かが与え続けてくれるのをただ期待するのではなく、一人ひとりがまちの創造者として、まちの魅力は何なのかという長野のまちのかちの本質に迫り、価値を創出し続けなければなりません。人々は価値あるものに魅力を感じるのです。価値は、他と違うところに生じます。長野の価値の根源は、長野ならではの風土や文化、歴史の他、日々の暮らし、若者に知られていない地場産業の魅力にあるはずです。それらに着目し、行動に起こすことで、まちの内外の人々からの共感を得て、まちの活性化に繋げることが必要であり、起点となる人の想いを形にし、まちの人々や行政、大学、企業、各団体を巻き込んで運動の源をつくり、まち内外の人々から共感を得ることでより大きな運動となります。まちの発展に寄与する為に、我々は若者と共に今こそ行動を起こすのです。まずは、長野青年会議所がハブ役となり、市民や行政、大学、市内企業、各機関とも連携しながら、若者に長野の価値に気づいていただくと共に、地域に住まう我々も新たな視点を取り入れ、両者の相互利益となる仕掛けを行うことが重要だと考えます。
継往開来
長野青年会議所は昨年創立70周年を迎え、本年度は71年目の歩みを進めようとしています。どんな時代でもこの団体に所属する青年の夢は変わりません。“おらがまち”がより良いまちであり続けたい。その一心なのです。そんな夢を実現する為に灯台の光となって我々を導く存在が未来ビジョンであります。近年、JCIミッション並びにJCIビジョンやJC宣言文の変更が見られるものの、まちづくりとひとづくりという両輪がバランスよく機能することが、この青年会議所にとって最も重要であり、時代が移り変わりゆくも変わらない青年会議所運動の本質です。つまり、まちづくりとひとづくりは表裏一体なのです。大切に創り上げた70周年未来ビジョンを細部まで紐解き、10年後への航路を示すことが71年目を担う我々にとって最も大切なことといえるでしょう。真のナガノを創造する為に自ら示した未来を運動として発信し実現していく。私達青年会議所メンバーが燈を掲げ、明るい豊かな社会への先導役を率先して担っていかなくてはならず、長野青年会議所の合言葉である明確な理念を新しく形作ることで、より明確な我々の存在意義を指し示すことに繋がると考えます。同時に70周年未来ビジョンにはLOMビジョンとして5つの行動指針が示されました。どの指針も最先端を走る地方LOMの確立の為には必要ですが、未知なるウイルスによって前例や伝統の継承が途絶えてしまった今、改めて長野青年会議所に連綿と受け継がれてきた機微とリーダシップ開発について互いの想いをぶつけ、熱い議論を交わすことで足下から見つめ直し伝えていく、それがLOMビジョン達成の一歩目に繋がると私は考えます。
また、長野青年会議所では国際という舞台を身近に感じられる活動や、姉妹・友好JCとの交流、JCIの諸会議への参画をしている。これはいわゆる民間外交であり、このような草の根の活動は恒久的世界平和を目指す青年会議所にとって絶対に欠かすことのできない重要な使命です。先輩方が創り上げた世界との繋がりを、継続させ、より深くさせていくことが、私達だからこそできる国際都市への確かな道の一つであります。自国と他国の双方を深く知り、決して一方の主張を押し付け合うことではなく、先輩方が培ってきた友情関係の上で、私達は今までよりさらに一歩進んだ関係性を構築すべき時期に来ています。今まで以上の相互理解、今までにない段階の交流に踏み込む為に、民間外交の当事者としての意識を持って行動し、都市と都市の間にさらなる未来志向の関係を築いていくことが必要です。さらに、長野市のさらなる共生社会の実現に向けて母国語以外でのコミュニケーション能力は、国際社会で活躍する為の大切な要素です。それと同時に、私達が子ども達に育まなければならないのは、住み暮らす地域への想いです。それは日本人の子どもに限った話でなく自分の生まれ育った故郷への愛情や誇りは、グローバルに活躍する人財の心の拠り所となり、そして彼らの活躍は、世界にNAGANOを発信するきっかけになります。今こそ、青年会議所の持つ知識・経験・人脈を最大限に活用し、真の国際都市「NAGANO」の実現に向けた新たな一歩を踏み出そう。
いざ革新の時
長野市が誇る2大祭りを中心となって運営しているのは紛れもなく長野青年会議所であり、この2大祭りの存在が我々の心のレガシーとなり、誇りとなっています。長いコロナ禍を乗り越え、沈んだまちに活気をもたらしたのは市民の心を繋ぐこの祭りであることを我々はこの目で目撃しました。この動と静の全く異なる要素を持つ祭りですが、それぞれのミッションは、関わる方々の心を笑顔にするということで共通していると言えます。しかし、長きに亘り運営を担ってきたこの祭りも、新型コロナウイルスなどによって変容した社会の考え方や枯渇する財源問題によって大きな転換点を迎えています。
長野びんずる祭りは今年で54回目を迎えます。国宝善光寺から不滅の常燈明の火を採火し幕を開くこのお祭りも、我々の先輩諸氏がまちに活気をもたらす為に試行錯誤し、様々な形を模索しながら長野市民祭として昇華させてきました。そこには常に「市民総和楽・総参加」の理念があり、市民の意思が反映される祭りを目指してきたと言えるでしょう。我々は改めて、この祭りを創り上げ、市民祭として市民の皆様に親しまれ、誇りある祭りへと成長させ続けてきた先達やその歴史に深い感謝と敬意を抱くと共に、新しい生活様式の影響が最も顕著に現れているであろうこのお祭りに今一度真摯に向き合い、新しい長野びんずる祭りをこの年から築き上げたい。そして、今こそ青年として英知を結集し、固定概念に捉われず、運営者、踊り手、参加いただける市民の皆様が熱狂し、郷土に誇りを想い、地域を繋ぐ祭りを創り上げ、一人でも多くの市民を笑顔にできるびんずる祭りの理念を体現していく祭りを次代へと継承したい。
一方で長野灯明まつりはオリンピック憲章であるオリンピズムの世界平和への願いを、様々なレガシーが根付くこのNAGANOから、オリンピック開催都市として弛まぬ平和への想いを発信している祭りです。長野市の魅力である透き通った空気感を存分に感じることのできる冬の時期に、国宝善光寺を五色に照らし、その足下を参加者の方が想いを込めて作成した灯り絵と幻想的な光が門前からまち全体を照らすことで、この期間は改めて平和とは何かを考える機会となります。また、コロナ禍前の最盛期には70万人近い来場者を集めていたこの祭りは、確かな地域活性化の観光資源になり得ることができ、地方創生の手掛かりになる祭りだといえます。この灯明まつりが継続して平和の願いを発信していく為には、祭りを活用した新たな観光戦略を構築する必要があり、地域の消費拡大に貢献し、地域の飲食・宿泊・他の体験型観光へと繋げ、地域交流人口の増加、コミュニティ活性化の起爆剤として活用しなくてはなりません。その為にも、健全な運営の為にお金を稼ぐ仕組み創りを再構築する必要があるのです。変わることのない祭りの目的を軸としながらも、決して途絶えさせてはならないこの灯明まつりの未来を21回そしてその反省を22回の祭りの企画を通して成し遂げよう。まさにこの2つの祭りは革新の時を迎えています。
結びに
2015年度に私が長野青年会議所に入会して、早いもので9年が経ちました。尊敬する先輩、かけがえのない同期が幾人も卒業してしまいましたが、新しい出会いが毎年のようにありました。
「青年会議所辞めたくなったことはないの」と良く聞かれます。私は、この団体に入会し様々な出会いを経験する中で、人と向き合うことの奥深さを知りました。人が変わっていく様を間近に見られる、色んな人の熱き情熱に触れられる、自分とはかけ離れたタイプの人間と仲良くなれる。青年会議所は本当に不思議で「面白い」団体です。
せっかくの青年会議所活動です。「面白い」ことに取り組みましょう。まずは目の前の機会に挑戦すること、それがおのずと自己の信じられないほどの成長と社会貢献に繋がっていきます。自己の成長を感じると、今度はそれを人に手ほどきしたくなります。そうして青年会議所活動は続いていくのです。自分が面白いと思い、楽しまなければ、ムーブメントは起こせません。青年会議所の運動そのものを面白いと感じることができる、そして気づいたときには誰かの為に行動し、大いに楽しみながら自己成長と社会貢献の機会を得ることができる、それが青年会議所の価値です。さあ、“わっしょい”の威勢のよい掛け声と共に、面白い2024年度が私達を待っています。
伝統を誇りに、未来への希望を胸に抱き、
「不易流行」~誰かの為に、新たな一歩を共に歩もう~
2024年度理事長 有吉 隆