2025年度
長野青年会議所
2025年度理事長所信
「挑戦を未来の力に」
~大志を抱き、誰が為に挑み続ける~
先達の熱き挑戦の積み重ねによって築き上げられてきた長野青年会議所。
我々、JAYCEEは困難な課題に立ち向かい挑戦し、
そのチャンスを掴み成長を遂げる。
まちの為、人の為、誰が為に、
大きな志をもち、将来への希望を抱き挑戦を続ける。
その歴史を共に繋いでいこう。
輝ける未来のために。
はじめに
私が長野青年会議所へ入会したのは2018年。当時、何も分からない新入会員ながらに感じたことを7年が経過した今でも鮮明に覚えている。それは例会や各事業で格好良く輝く理事長をはじめとする正副理事長会議や委員長、正会員の姿である。その姿は一つの事業に真摯に向き合い挑戦し、愉しみながらも積極的に活動を行っている姿であり、新入会員の私はその姿に強く惹かれ憧れを抱き、私の指針となっている。私は長野青年会議所をそんな誰もが憧れる格好良い大人が集まる組織にしたいと思っている。私が思う格好良い大人とは、マナーやモラルを守り、礼儀正しく、一つのことに真摯に向き合いひたむきに打ち込み挑戦する人である。では、格好良いJayceeとは何だろうか。議案や資料を作成しパソコンと向き合っている姿なのだろうか。委員会や会議を行っている姿なのだろうか。例会や事業を開催し登壇している姿なのだろうか。それとも光は浴びなくとも縁の下の力持ちに徹する姿なのだろうか。はたまた、懇親会で盛り上げ役に徹する姿なのだろうか。私はそのどれもが格好良いJayceeの可能性を秘めていると感じる。青年会議所は単年度で役職や立場が変わりその時々の環境によって新たな挑戦が生まれる組織である。その挑戦の中にJayceeや大人としての新たな学びと成長の機会があり、その様々な挑戦の機会こそが青年会議所の本質なのではないだろうか。その新たな挑戦にひたむきに打ち込み、格好良いJaycee、そして格好良い大人を目指そう。
青年会議所の使命は社会により良い変化をもたらすために青年にリーダーシップの開発と成長の機会を提供することである。青年会議所は常に成長と発展の機会が与えられる場所であり、まずは我々がここでしかできない学びと経験を得ることで、一人の市民、そして青年経済人として成長することが必要である。そして、地域の課題を解決する過程を通じて指導力の開発を行い、今日よりも明日をより良くするため、その指導力をもって社会に貢献しなければならない。私は入会以来、常に成長と発展の機会を求めて来たのだと思う。そこには輝ける会員の姿を見て、「この役職はどんなことをしているのだろう。」と思う好奇心と「こうなってみたい。」という羨望、そして「こいつには負けたくない。」という強い気持ちがあった。そういった成長を求める感情は人それぞれなのだろうが、近年では同期や同年代はライバルであるといった青年会議所ならではの文化が薄れてきているように感じる。同期や同年代は友情を育むべき良き友であると同時に研鑽を共にする良きライバルであり、それがさらに我々を成長させる要素の一つなのではないだろうか。ぜひとも全会員に成長のための良き友とライバルをもっていただき、有意義な成長と発展の機会を掴み取っていただきたい。そして何よりも青年会議所は常に一年に一度、新たな挑戦の機会がやって来る。毎年新たなリーダーのもと、役職や組織図がつくられ、新たな所信や委員会方針に沿って事業が展開されるのである。その事業を成功させるために、新たな知識を求め、周りに先駆けて行動を起こし、行政や市民、子どもや学生といった対外対象者を巻き込みながら明るい豊かな社会を実現するために挑戦を続けるのだ。それが我々Jayceeの成長と発展に繋がると確信している。
青年会議所は輝く個性が調和する未来を描き、社会の課題を解決することで、持続可能な地域を創ることを宣言している。それは青年会議所が発足以来長きに亘り地域社会を想い、青年の自由な発想と行動力で「明るい豊かな社会」を目指し、まちと人を巻き込んだ事業を展開することで、課題解決に向けた運動を推進し伝播させてきた実績と成果があるからであり、市民に対して青年会議所の存在意義を示してきたからである。しかしながら、移りゆく時代の中でその時その時の新たな課題が生まれ山積し、我々は常にまちの未来に考えを巡らせ、その新たな課題に対し柔軟な発想をもって事業を展開している。我々はスターターとして運動を創る組織であり、時代と課題に合わせた多種多様なステークホルダーの共感を得ると共に連携し、ハブとなることで運動を最大化させる必要がある。しかし、運動の推進はおろか事業を行うだけで終わってはいないだろうか。動員するためだけの体裁を整えた事業になっていないだろうか。また、それで自己満足をしているだけになっていないだろうか。例え対象者が少なくともその人の心に響く事業を展開し、強く想いを伝えることでその人の意識を変革しよう。それが周りの人に伝わり運動として伝播していくのではないだろうか。我々は地域や他団体に先駆けてムーブメントを起こす団体である。10年後20年後の将来を見据え潜在的な問題や社会課題をも掬い上げ、明確な目的をもって恐れずに事業を展開し、誰にとっても魅力溢れるまちにするために、この熱い想いを一人でも多くの市民に伝播させることで、我々が住まうこの長野を輝けるまちにしよう。
確かな基盤とさらなる挑戦
これまで長野青年会議所は、厳格な組織運営のもと総会や理事会を開催するとともに、常に透明性をもった会計管理を行ってきた。それは72年目を迎える今となっても変わることはない。今後も先達が繋いできた組織をより強固な組織とするために公益社団法人として法令を遵守するとともに、公益性の追求と適切な会計管理を行っていくことが求められる。青年会議所運動はその強固な基盤と信頼の上に成り立ち、それがあるために青年としての自由な発想と情熱により多くの事業が展開されるのである。しかしながら、ここ数年は会員の当事者意識の希薄さから組織の最高意思決定機関である総会への出席が少なくなり、委任状による出席で「良し」としている傾向が見て取れる。総会への出席は会員の権利と義務であることを改めて意識し、組織の方向性を決定する総会において自らの意思で議決権を行使してほしい。また、毎月多くの議案書が上程され審議されている理事会では、事業の計画に対して会員から預かっている会費が適正に使われているのか、その事業計画と費用で事業が最大化されるのか議論されている。上程者が想いをもって作成している議案書に全会員が関心をもち意見を集約する機会を創ることで、さらに運動の最大化を図るとともに当事者意識を高めていきたい。総会や理事会、会計管理は直接市民と関わることはないが、一つひとつの総会や理事会が、周り回って誰かのためになり、笑顔を創っていくと確信している。そして、総会や理事会の承認を得ることができた上程者に対して、すべての出席者から敬意をもって拍手が送られる伝統を未来へ繋いでいこう。
長野青年会議所には強固な組織運営を行っている実績がある。だからこそ新たな挑戦の機会である出向という文化が根付いているのだと感じる。長野青年会議所が毎年多くの出向者を輩出しているのは、出向がこの組織やまちを飛び出しさらに羽ばたける機会であるとともに、出向者が世界や日本各地の会員と繋がることで新たなネットワークの構築や、各地のまちを訪れることで長野市の現状や課題を客観的に捉えることのできる貴重な機会であるからである。出向者にはこの組織を代表している自覚をもち、全国の多種多様な会員と交流し関係を深め、自身の成長や活動への意識向上の機会として捉えるとともに、全国各地へ赴くことでそのまちの風土や雰囲気を感じ出向を楽しんでいただきたい。そして、その経験と成長を全会員に伝えてほしい。それが未来の出向者を輩出するとともに、日本青年会議所や地区協議会、ブロック協議会との懸け橋となり、長野青年会議所をさらに成長させるのだ。また出向者をハブとした全国規模のネットワークは、近年増加する自然災害での支援において正確な情報収集と迅速な災害対応を可能とし、相互に支援を行う体制が整っている。これも長きに亘り長野青年会議所が多くの出向者を輩出し、日本全国から実績と信頼を積み重ねてきたからであり、今後もその信頼を積み重ねていかなくてはならない。そして、この組織に残る会員はぜひとも出向者を応援して欲しい。私も出向の経験があるが出向者は組織を離れ難しい環境の中で活動を行い、また違った不安と緊張の中で運動に邁進している。各種大会で声を掛けていただくだけでも心強く、この組織の会員が支えてくれているからこそ、組織の外へ飛び出し新たな機会に挑戦することができると感じる。この組織に残る会員は各種大会に参加し、長野青年会議所では味わえないスケールの大きな事業や新たな価値観に触れ、それをもち帰るとともに、出向者に労いと激励を伝えてほしい。出向の文化と組織の成長を未来へ繋げるため、全会員で出向者を応援しよう。
まちへの共感と学びの機会
長野青年会議所の認知度と広報力は常に課題の一つとなっている。長野青年会議所は長野びんずるや長野灯明まつり、青少年育成事業や地域連携事業など、このまちにとって有益な事業を数多く展開してきた。しかし、そのどれもが長野青年会議所が行っている事業だと認知している市民は多くはないのではないだろうか。本年は全会員が長野青年会議所の広告塔であることを再認識し、会員それぞれがより多くの市民へ広報することで認知度の向上と市民の意識変革を起こしたい。現代はインターネットやSNSの普及により、いつでも誰とでも繋がれる時代となった。多くの広報媒体がある中でどの媒体を使い、誰に何の目的でどんな情報を届けるのか、効果的な広報とは何なのか常に考えを巡らせ、改めて広報について検討することが必要である。これまで長野青年会議所が実施してきた多くの広報を精査しブラッシュアップを行うとともに、コンプライアンスに留意しながら正しい情報を伝え、このまちとの繋がりをより強固なものにし、長野青年会議所のファンを増やしていこう。
全会員に出席の義務と権利がある例会は、会員の一番身近な成長と発展の機会である。例会は常に開催する側と参加する側の双方に学びと新たな発見があり、そして成長のきっかけとなる場であるとともに、会員としての資質向上の場であることが求められる。また、全会員が一堂に会する例会は、長野青年会議所の運動の方向性を確かめ、心を一つにする機会でなければならない。当然ながら参加する会員がいなければ例会は成り立たない。例会を構築する委員会は発信する側の決まりきった例会内容や展開、常識の枠に収まった発想になっていないだろうか。このまちのリーダーである我々が、このまち、この組織の課題を的確に捉え、課題解決に向けて調査研究し、英知と情熱と自由な発想をもって挑むことができれば、常識の壁を打ち破り、生きた情報や想いのこもった有意義な例会となるのではないだろうか。そんな情熱溢れる例会には多くの会員が出席するはずである。また、参加する側はマナーとモラルをもって参加し例会を傾聴する姿勢が求められる。月に一度の素晴らしい機会である例会を居眠りやスマホなど無駄に時間を過ごしてはもったいない。参加する側も事前に例会の趣旨や目的、参加することでどんな学びがあるのかを理解した上で参加してほしい。開催する側と参加する側でお互いに目的意識をもって例会に参加することで、全会員の心の方向性が一つになるのではないだろうか。伝統ある長野青年会議所の例会は、やって終わり、聞いて終わりではなく、その例会から新たな学びや気づきを得て会員としての資質を向上し、その後の行動に繋げるきっかけづくりの場である。自らの行動でこのまちを明るい豊かなまちにしよう。
国際交流の先駆け
我々青年会議所はそれぞれの地域をより良くすることで恒久的な世界平和を目指している組織である。しかし、第二次世界大戦の終結から2025年で80年を迎え、世界に目を向けるとウクライナ情勢や中東での紛争拡大の危機、そして中国の台頭やそれに伴った台湾有事の危機、さらには核の実戦配備が過去最大になるなど、世界は戦争という手段をもって他国に圧力をかけ、自らの力を誇示するとともに考えを強制しているように感じる。今、世界は混沌を極めているのではないだろうか。我々は民間外交の担い手として長きに亘り先頭を切って国際交流を行ってきた歴史があり、姉妹青年会議所であるソウル江北青年会議所と友好青年会議所である台中國際青年商會との友情を途絶えさせることなく続けていかなくてはならない。まちのリーダーである我々が国際的な視点をもつとともに貴重な機会である両青年会議所との交流に積極的に参画し、相互理解と多文化共生の精神を高めることが、このまちの国際化を推進する基盤となるだろう。その行動こそが恒久的な世界平和への第一歩となると信じている。また、新型コロナウイルスが日常から消え、ニューノーマルやアフターコロナは残りつつも世界は以前の様子を取り戻してきている。長野市在住の外国人は増加傾向にあるが、特にインバウンドの回復はこの長野市にも影響を与え、長野駅周辺や善光寺には外国人観光客が溢れつつあり、経済にも好影響を与えつつもオーバーツーリズムが心配される。市民の足である路線バスは土・日・祝日の運航を減便、または運休し、市外観光地への観光バスを増便しており、長野市民の足に影響を与えている。しかしながら、このインバウンドの増加をチャンスと捉えなければならない。冬季オリンピックを開催した国際都市「NAGANO」の魅力を再び世界へ広める契機とするのだ。このまちが国際都市として魅力を発信するためには、我々が広告塔となることはもちろんのこと、市民との協働により国際的な視野を広げ感覚を高める機会を創出することが必要であると感じる。このチャンスを市民一人ひとりの多文化共生と恒久的な世界平和への意識を高める機会として活用し、外国人の交流人口を増やし賑わいを創出することで、真に国際都市としての地位を確立しよう。
壮大な夢と自由な発想
2024年、平和の祭典であるパリオリンピック、パラリンピックが開催され、日本中が熱狂の渦に包まれた。ひたむきに競技と向き合い打ち込むアスリートからは多くのパワーと勇気、そして、感動を与えていただいた。このまち「NAGANO」でも、1998年に冬季オリンピック、パラリンピックが開催され、当時、中学生だった私も多くの会場に足を運び、憧れの選手に熱狂したことを覚えている。その長野オリンピック招致に向けて声を上げ行動を起こしたのがこの長野青年会議所であり、オリンピックの先駆けとして開催されたのが1996年の第45回全国会員大会長野大会である。この一連の青年会議所運動は長野青年会議所の存在を全国に広げるだけでなく、地域へ多くの経済効果をもたらすとともに、「NAGANO」の認知度を向上させ、国際都市として確立する契機となった。今、我々現役会員はこのような壮大な夢と自由な発想をもって青年会議所運動を行っているだろうか。前例踏襲の文化が染みついてはいないだろうか。今こそ、我々はこの状況を打ち破るため、10年先、20年先の将来を見据えた大きな目標をもち、困難な挑戦をすることでこのまちと組織の発展のきっかけとすることが必要だと感じる。その挑戦こそがこの「NAGANO」、そして、長野青年会議所と会員それぞれにとってこのまちのリーダーとしての成長と発展の機会となると確信している。
長野青年会議所は創立72年目を迎える誇りと伝統ある組織だ。この72年の軌跡は先達が青年としての英知と勇気と情熱をもち、このまちのため、人のために全力で先頭に立ち、駆け抜けてきた歴史に他ならない。我々現役会員はそのことに感謝の気持ちをもち、青年会議所運動に邁進しなければならない。その青年会議所運動の方向性を示す指針となっているのが未来ビジョンである。未来ビジョンは10年先の未来へ向けて組織の目的や目標、価値観といった根幹を示すものであり、全会員が共有し意思を統一する道標である。「ヤングブルー」の精神のもと、新たなアイコトバ「青炎を灯そう」を胸に、本年は70周年未来ビジョンをもとに新たな挑戦を求め、運動の推進のための調査研究を行いたい。我々がこのまちについて考え、人を想い、自己成長のきっかけを創るのだ。また、本会の法人格に関する議論も忘れてはならない。全会員が闊達に議論を行い様々な意見を次世代へ繋いでいくことが必要である。この72年目の年は75周年、そして80周年に向けてさらに基盤を盤石にするとともに運動に推進力を与えていきたい。そして、このまちにおける長野青年会議所の存在感をさらに高めよう。
無限の可能性
無限の可能性を秘めている子どもたちは、このまちにとって宝であり、明るい豊かな社会の実現を目指す我々にとって将来への懸け橋である。我々、長野青年会議所は長きに亘り青少年育成事業に尽力し、このまちの子どもたちに様々な学びや体験の機会を提供し、郷土愛の醸成とリーダーシップの開発、将来への希望など、健やかな成長に寄与してきた。それは、その時々によって事業の姿や形は違えど、この「想い」だけは変わることなく先達から連綿と受け継がれてきた歴史があるからだ。しかし、現代の子どもの成長を取り巻く環境は常に変化しており、子どもが成長し自立する上で、実現や成功などのプラス体験はもとより、葛藤や挫折などのマイナス体験も含め、多様な体験を経験することが不可欠である。しかしながら、少子化、核家族化が進行し、子ども同士が集団で遊びに熱中し、時には葛藤しながら、互いに影響し合って活動する機会が減少するなど、様々な体験の機会が失われていると感じる。また、2019年に、WHO(世界保健機構)が、「ゲーム障害」を新しい依存症として認定してから久しく、現代の子どもたちは、ゲームやインターネット等の室内の遊びが増えるなど、偏った体験を余儀なくされているのではないだろうか。さらに、人間関係の希薄化により、地域社会の大人が地域の子どもの成長に無関心になり、積極的に関わろうとしない、または、関わりたくても関り方を知らない大人が増えていると感じる。子どもたちはこのまちの将来を担っていく存在として、我々子育て世代の大人が子どもたちの健やかな成長を促すために、様々な学びの場を提供し、新たな発見や体験、そして、それをもとに表現する力を付けることが求められているのではないだろうか。本年はそのような経験の提供を通じて、子どもたちのシビックプライドの醸成とリーダーシップの開発を図っていきたい。それが、このまちを誇らしく思い将来のリーダーとなって地域に貢献する契機となるはずである。
そして、2023年に新たに策定した70周年未来ビジョンでは、長野びんずる、長野灯明まつり、そしてこの「青少年育成事業」を長野青年会議所事業の3本柱とする戦略が掲げられ、2024年には、青少年育成事業として年度ごとに繋がりをもたせた新たなプロジェクト「JCI NAGANO PLAN 80 ~Dream of Youthプロジェクト~」が発足した。その2年目にあたる2025年は、このプロジェクト名を強く打ち出した事業を行い、創立80周年に向けて長野青年会議所といえば「青少年育成」といわれるさらなる基盤を創ることで、行政や市民の認知度を高めるとともに、共感をいただき巻き込みながら、子どもたちに健やかな成長の機会を提供したい。シビックプライドの醸成とリーダーシップの開発でこのまちに多くの「Little leader」を生み出そう。
まちの未来の為に
我々は青年の英知と勇気と情熱を結集し、このまちの明るい豊かな社会の実現に向け、地域社会の発展を図ることを目的に、行政や企業、市民や学生など地域社会からの共感と協働により長きに亘り青年会議所運動を推進してきた。今もなお長野青年会議所は先達から受け継いできたその基盤をもとにこのまちのより良い発展のため、ここで住み暮らす人のため、地域社会の先頭を駆け様々な事業を展開している。この長野市は都心からのアクセスの良さに加え、新幹線の延伸により北陸方面からのアクセスも良くなった。四方を山に囲まれ自然が溢れる四季が織りなす豊かさと、古くから伝わる小麦粉やそばなど粉もん文化が盛んな土地柄は「長野らしさ」としてそれぞれが魅力的だと感じる。しかしながら、長野市の総人口は平成22年をピークに減少を続けており、それに伴いまちの活気や賑わいも減少しているように感じる。この現状を打破するためには、このまちに愛着をもって訪れる人たちや地域との関わりを多くもつ関係人口の増加が必要だと考える。日本政府は「将来にわたって活力ある地域社会の実現」を目指し、2014年に「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定した。2020年からの第2期では、東京一極集中の是正の強化に取り組んでおり、我々は東京一極集中から地方分散への流れを捉え、柔軟に青年会議所運動を行わなければならない。その「長野らしさ」を強みに事業を展開することでこのまちに賑わいを創出し、地域に愛着のある関係人口を増やしていこう。
他方で、令和4年の長野県知事選挙では全体の投票率が40.94%と低く、特に若者の投票率は全体の投票率からさらに低いのが現状であり、選挙権者が18歳以上に引き下げられ若者が政治に触れる機会が増えてきてはいるが、若年層を巻き込んで社会全体が政治に関心をもち、当事者意識をもって参加することが必要である。しかし、近年、社会で広く取りざたされている政治不信を招いているのは有権者である我々市民が選んだリーダーであり、我々有権者は政治を自分ごととして捉え、自らに責任をもって主権を行使しなければならない。また、多種多様で複雑化した社会課題が存在する時代において、偏った世代のみの政治参加では真に明るい豊かな社会は訪れない。今後、この長野市が地方都市としての存在感を確立し、誰にとっても住み暮らしやすい魅力あるまちとなるためには、我々、有権者が未来への責任をもって政治参加するとともに、まちの未来を切り拓く若者が主体的に参画することが求められる。我々長野青年会議所は社会の責任世代として、まちのリーダーとして、子どもや若者の見本となる行動を起こすとともに、政治参画への意識づけを行い、共に社会課題の解決へ向けた行動を起こす契機を創出したい。2025年は長野市長選挙をはじめ、多くの選挙の機会が予定されており、まち全体で主権者としての意識を醸成し、政治や選挙、社会課題への関心をもつとともに、このまちの一員としての当事者意識を高めるきっかけを与えよう。そのきっかけが市民の行動力を高め、誰もが憧れるまちへと発展すると確信している。
平和への祈り
長野灯明まつりは善光寺へのライトアップと灯り絵による暖かな灯りで、善光寺界隈を幻想的な光に包み込み、善光寺を照らすその静かな灯りは、1998年冬季長野オリンピック、パラリンピックの平和への願いを祈る灯りであり、その雰囲気は冬の寒空のもと平和への想いを改めて考える機会となっている。本年で第二十二回目を迎え、夏の長野びんずると並び冬の長野を彩る風物詩となった長野灯明まつりは、近年では再開発された城山公園を活用し、灯り絵を並べるとともに、夜空に浮かぶLEDランタンを開催するなど、新たな取り組みやイベントで多くの来場者を集め、その平和への祈りを長野市民や市外からの観光客、外国人観光客と共有している。また、昨年は長野市が開催しているNAGANO DESIGN WEEKとの共催により、善光寺へと続く中央通り沿いのイルミネーションやながの表参道セントラルスクゥエアでのイベントの開催により、まち全体がまつり一色となることで、まちに活気を与える機会となるとともに、観光資源としても価値が向上していると感じる。しかし、長野灯明まつりを開催するにあたり、運営方法や資金面などの課題は依然として残されているのが現状であり、全体事業でありながらも会員の当事者意識の希薄さが顕著になるなど、継続開催を組織の総意とした長野灯明まつりを未来へ繋いでいくためには、さらなる仕組みと意識の醸成が必要であり、常に考えを巡らせ問い続けることが、この伝統になったまつりを次代へ繋いでいくためにできることなのではないだろうか。第二十二回長野灯明まつりは新たな試みとして公開例会として開催することを検討したい。その試みにより全体事業としての全会員の当事者意識を図るとともに、運営面での効率化に寄与できるのではないかと考える。また、その効果の検証と考察を第二十三回長野灯明まつり以降に引き継いでいき、継続開催へ向けて試行錯誤を続けていくとともに、灯り絵が文化としてこのまちに根付き、誰もが身近で当たり前の存在として認知される取り組みを行いたい。長野灯明まつりはこのまちにとって平和への祈りを全世界へ発信するとともに、観光資源としてまちに活力を与える財産となるまつりだ。この伝統ある貴重なまつりを次代へ繋いでいくため、全会員が当事者意識をもって挑み続けよう。
青年会議所運動の根幹
2025年は長野青年会議所にとって大きな転換点となると考えている。それは2024年と2025年に多くの経験を積んできた会員が卒業を迎えるからである。そのような状況の中にある長野青年会議所は今後もこの組織をどのように成長させ発展させていくのだろうか。全国的に見ても青年会議所の会員数の減少が課題となっているが、この長野青年会議所においても2010年の264名をピークに減少の一途をたどり、現在では約半数になってしまった。会員数の減少は単純にこの組織の力の低下を表しており、各委員長が想いをもって構築する事業実施のための費用の圧縮を迫られるとともに、マンパワーの不足に直結する。また、事業実施のために会員一人ひとりの資質を上げようとも、会員同士の研鑽の機会は減少してしまう。やはり青年会議所運動を最大化させるためには多くの多種多様な人財が必要であり、性別や国籍、職種にこだわらず時代に即した人財が求められている。また、会員拡大は会員にとって貴重な成長の機会であり、まだ見ぬ人財に出会うことができる貴重な事業だ。会員拡大は我々青年会議所運動の1丁目1番地と言われるが、青年会議所を知らない対象者へこの想いと情熱を伝え意識変革を起こし入会へ導く。その行動こそが青年会議所運動の根源なのではないだろうか。まさに1丁目1番地なのである。この組織の発展のためには多くの人財が必要であり、まだ見ぬ同志に会員一人ひとりがこの組織の魅力を伝えることが会員拡大のカギとなる。会員拡大は全体事業だと理解し、当事者意識をもって取り組んでもらいたい。その積極的な取り組みが自身の成長に繋がり、組織の成長と発展に繋がるのだと確信している。自己成長を求め、この組織の魅力を多くの市民に伝えることで、未来へ繋がる多くの同志を迎え入れよう。
真の市民総和楽・総参加
第55回目を迎え節目となる長野びんずるは、先達が長きに亘り情熱をもって挑戦を続けてきた祭りであり、この長野市にとって夏の風物詩としてなくてはならない祭りである。我々はその歴史に敬意を表すとともに感謝をしなければならない。善光寺で約1400年絶やすことなく燃え続ける「常燈明」を採火し、その燈明を灯した大火釜を中心に多くの市民が踊り、まち全体が一体となる伝統ある祭りは一年で一番の熱をまちに生み出す。しかし、2020年、2021年の新型コロナウイルスの影響による祭りの中止は多くのネガティブな影響を与えた。それはニューノーマルといった新たな価値観による人と人との繋がりの希薄さや、働き方改革といった企業や各団体の組織の在り方による結束力の低下であり、長野びんずるの根幹である踊り手の減少が見て取れる。コロナ禍での2年の中止を経て、現在までに徐々に祭りの規模を戻しつつも、以前の参加者数には届いていないのが現状であり、この祭りの発展を図るためには、市民が互いに打ち解け楽しむ「総和楽」と、市民が創り上げる祭りである「総参加」の基本理念を広く伝播させ、真の「市民総和楽・総参加」の実現が必要であると感じる。本年、第55回長野びんずるは祭りの規模、踊り手、観覧者数をコロナ禍以前に戻し、多くの参加者が集い想いを一つとする熱く魂の籠る祭りとしたい。その先頭を我々長野青年会議所が走り、この伝統と歴史ある祭りをさらに発展させ市民の地域愛の醸成を図るとともに、まちの活性化に貢献し、未来へ繋いでいく熱き挑戦を続けよう。
結びに
1953年7月22日、わずか25名の熱き情熱と高き志をもった青年によって発足した長野青年会議所は本年で創立72年目を迎える。これは長きに亘る先達の弛まぬ努力と挑戦の継続によってその伝統と歴史を積み重ねてこられた年月である。我々はその功績に感謝し青年会議所活動を行うとともに、さらにこのまちをより良くするためその高き壁を越え努力と挑戦を積み重ねなければならない。長野青年会議所の指針である70周年未来ビジョンを策定した2023年、その未来ビジョンをもとに新たな一歩を踏み出した2024年。2025年はその高き基盤をもとにさらに青年会議所運動を加速させ推進する一年である。そのためにも会員一人ひとりがこの瞬間も成長するために、多くの仲間と共に困難な課題に立ち向かい挑戦し、そのチャンスをものにすることでより良く自らを変え、この長野青年会議所で圧倒的なリーダーシップを身につけよう。私はその成長が「まちの為、人の為、誰が為が、自分の為になる。」そう信じている。そして、将来への希望を抱き挑戦を続ける大きな志をもった多くの会員をこのまちに増やしていきたい。先達から繋がれた次代を創るリーダーを輩出し続けている長野青年会議所は、このまち、ここで住み暮らす人たちをより良く変えるチカラをもっていると確信している。目指すべき将来を強くイメージし、強く願い、弛まぬ努力を続ければ、それは必ず近いカタチとなって実現する。
我々は時代に対応するのではない。
高き理想を掲げ、圧倒的なリーダーシップで次代を創るのだ。
会員一人ひとりが目指すべき姿を想像し、挑戦を続ける。
その歴史を共に繋いでいこう。
このまちの輝ける未来のために。
「挑戦を未来の力に ~大志を抱き、誰が為に挑み続ける~
2025年度理事長 村田 雄介